橋本聖子会長×東ちづるさん「MAZEKOZEアイランドツアー」を世界に発信 すでにある、まぜこぜの社会に気づいて

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東京2020大会で競技と共に実施されるのが、文化プログラム「東京2020 NIPPONフェスティバル」です。その主催プログラムの一つ、「共生社会の実現に向けて」をテーマとするONE - Our New Episode - Presented by Japan Airlinesでは、神奈川県横浜市で開催される「カガヤク ミライ ガ ミエル カナガワ 2021」(2021年8月14、15日)と「MAZEKOZEアイランドツアー」(2021年8月22日にオンライン配信)が行われます。

「MAZEKOZEアイランドツアー」の総合構成・キャスティング・監督・総指揮を担当する俳優の東ちづるさんが、公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(東京2020組織委員会)の橋本聖子会長と対談しました。障がい者アートなど「まぜこぜの社会」の実現に向けてボランティア活動を続ける東さんが、橋本会長と文化プログラムの意義や共生社会について語り合いました。

「MAZEKOZEアイランドツアー」の出演者と東さん
「MAZEKOZEアイランドツアー」の出演者と東さん

日本のカルチャーが変わる「ビックチャンス」

東京2020組織委員会会長 橋本聖子(以下、橋本会長)

オリンピック・パラリンピックでの文化プログラムというと、一般的にはなかなかなじみがないかもしれません。でも、大会はスポーツだけのものではないんです。文化と教育、そういうことを融合させて、生き方を創造することで、平和な社会の推進を目指す。オリンピック憲章にもあるように、スポーツも含めた文化の祭典なんです。

東ちづるさん(以下、東さん)

私はロンドン(2012年)のときに文化プログラムが大成功したのを知って、注目していました。東京2020大会が決まったときは、日本のカルチャーが変わるきっかけになる、特にあまり知られていないものが知られるビッグチャンスになると思いました。

橋本会長

そうですね。文化や芸術は、オリンピック・パラリンピックにとっても大切なものです。私は19歳で初めてオリンピックに出場しました。1984年のサラエボ大会でした。そのときは、まだオリンピックはスポーツの祭典という意識でした。オリンピックがスポーツの枠を超えた1つの大きな文化であると理解できたのは、競技人生の中盤になってからでした。

東さん

東京2020大会が、ロンドンに追いつき、追い抜くような大会になればいいですね。日本のカルチャーには力があると思います。今大会は多様性もテーマということで、どういう発信の仕方をするのか楽しみでしたし、意見を聞かれたりもしていました。どういうやり方が面白いかと、かなり提案はしてきたつもり。まさか、自分がやることになるとは思っていませんでしたが(笑)。

橋本会長

私は、東さんにやっていただけること、すごく楽しみにしています。これまでのご活躍も知っていましたので、実は、早くお会いして、いろいろとお話を伺いたかったんです。

東さん

お話をいただいて、少し迷いました。新型コロナウイルス感染症拡大の影響もありましたし。ただ、相談をしたら、みんな喜んでくれました。「社会が変わるチャンス」と言って、涙してくれる人もいたんです。マイノリティ表現者にとって、ビッグチャンスだと思っています。

文化や芸術は、オリンピック・パラリンピックにとっても大切なものと語る橋本会長
文化や芸術は、オリンピック・パラリンピックにとっても大切なものと語る橋本会長
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東京2020大会が目指す「多様性と調和」を表現

橋本会長

(「MAZEKOZEアイランドツアー」)の台本を拝見して、「これだ」と思いました。障がいのあるなし、ジェンダー、国籍など関係なく、いろいろな人が当たり前のようにそこにいて、それぞれが表現している。大会のテーマとして「多様性と調和」がありますが、まさに「これなんだ」という感じです。

東さん

映像は台本を100倍超えて面白いです!(笑)。演者がみな、本当に素晴らしい。MAZEKOZE(まぜこぜ)という言葉は、実は混ぜご飯からきているんです。多様性やダイバーシティは、まだ少し敷居が高いので、身近な言葉にしました。混ぜご飯って、それぞれの食材の良さを引き立たせる工夫がされていて、それを最後にさっくり混ぜるとおいしいんです。決して「ごちゃまぜ」ではない。それぞれの良さを生かし、混ぜることでさらに良くなる。

橋本会長

私も同じようなことを思っていたんです。日本パラリンピック委員会(JPC)の河合純一委員長は「ミックスジュースじゃだめ。フルーツポンチでないと」とおっしゃるんです。共生社会というと、健常者はミックスジュースを考える。ただ、それではそれぞれの果物の良さが分からない。1つ1つの個性を生かしたまま、集まってフルーツポンチにしないと。東さんの「まぜこぜ」と同じです。

東さん

いいですね。フルーツポンチ、使わせてもらっていいですか(笑)。確かに、多様性社会というとミックスジュースを思う方も多いですね。なんでもかんでも入れて、1つにする。そこから外れると、「和を乱す」、「秩序が壊れる」と。では、「和」って何でしょう。「秩序」って何でしょう。みなが同じ方向を向くことが、和とか秩序なら、すべての人にとって居心地のいい社会とは言えない。自由に、自分らしく、あちこちを向いている。それでも、尊重し合って、支え合って、それが多様性社会。まさに、個が生かされるフルーツポンチです。

今回のプログラムで伝えたいのも、まさにいろいろな人がまぜこぜに暮らしています、生きていますということ。共生社会を目指そうとか、多様性を実現しようとか言うけれど、もうすでにあるんです。普段は会わない人たちだけど、ちゃんとそこに生きている。それを可視化したいと思ったんです。

「まぜこぜ」、「フルーツポンチ」。多様性社会について語る橋本会長と東さん
「まぜこぜ」、「フルーツポンチ」。多様性社会について語る橋本会長と東さん

橋本会長

いいですよね。(「MAZEKOZEアイランドツアー」で巡る)いろいろな人がいる9個の島は、いずれも魅力的ですが、1つだけ行くとすれば、私は「超人の島」に行ってみたい。実は、私自身、障がいがあるんです。腎臓病と肝臓病を患って、また、呼吸筋不全症にもなりました。今も胸郭を開けないので、腹式呼吸で生きているんです。入院生活で車いすダンサーの方と出会って、一緒に踊ったりしました。自分自身の体のリスクは、実はチャンスなんだということも教わりました。ですから、車いすダンサーが出演する「超人の島」は興味があります。

東さん

「超人の島」には、GOMESS(自閉症ラッパー)とかんばらけんた(車いすダンサー)が出演します。スロープはあるけれど急なため、階段をはいずりながらステージに上がってパフォーマンスが始まる。気づいてほしいのは、これが緩やかなスロープだったら車いすで上がれる、これを作ったのは健常者だよね、ということ。ただ、最後はウィリーしながら斜面を降りる。障がい者=守られる人、弱い人、という概念は吹っ飛びます。「超人」って、どういう意味か、家族や友達、同僚と会話が進んでいけばいいなと思うんです。

橋本会長

そうですね。実は2016年大会招致のとき、コペンハーゲンでIOC総会があったんですが、突然の停電で真っ暗になり、みんな慌てました。そうしたら河合さん(JPC委員長)が「フロントはあっちだよ」って。暗闇の中から健常者を救ってくれて、「僕はずっと停電だもん」と。当たり前のことが、そうじゃない視点で見ると違う。オリンピック・パラリンピックが一体となってよかったと思いました。

東さん

気づきって大事なんですよね。そのためには、一緒にいること。理解することも大切ですけど、文献を見てもなかなかできない。一緒にいて、失敗して、間違えて、学んで、気づいて、知恵がついて......。お互いに尊重し合うためには、それが必要なんです。説教くさいプログラムにはしたくないけれど、日本の素晴らしいエンターテインメントを見て何かを感じてもらえれば。それが、教育にもつながると思うんです。

橋本会長

教育ですね。やはり。子どもの頃から当たり前にフルーツポンチやまぜこぜの中にいたら、普通に感じることができる。大人になってからだと、どう声をかけていいか、どう行動すればいいかと思ってしまう。それが、壁になるんですね。だからこそ、小さいときからのまぜこぜ教育がいかに重要か。

東さん

基本的に子どもたちには壁はないんですよ。それを無自覚に作っているのが大人たち。昔はこびとプロレスがあって、子どもたちは何の偏見もなくワーワー楽しんでいた。ただ、親御さんたちは「見せていいんですか」と躊躇(ちゅうちょ)する。決して悪いことではなく、ただ見たことがないので、影響を恐れているだけなんですけど。

橋本会長

そうですね。私たちの頃は、普通にありました。私も小さい頃は、街にこびとプロレスの興行が来るのが楽しみでしたから。

東さん

昔はバラエティなどで活躍されているこびとタレントの方もいらっしゃったんです。それが「障がい者を笑いものにするのはいかがなものか」、「働かせるのはいかがなものか」となって。結果的に彼らから職場を奪って「いかがなものか」ですけど。エンタメを通じて、障がいの有無やジェンダー、国籍、宗教など違いがあってもみな同じだということが広がればいい。東京2020大会やこのプログラムが、そのきっかけになればいいですね。

エンターテインメントを通じて、多様性への気づきが広がればと願う東さん
エンターテインメントを通じて、多様性への気づきが広がればと願う東さん

東京2020大会が真の「多様性と調和」を実現するためのきっかけに

橋本会長

何年か後、できるだけ早いときに振り返った時、東京2020大会があったから多様性と調和が当たり前に社会に受け入れられた、東京2020大会がきっかけだったね、と言われるようになればいいなと思います。

東さん

新型コロナで、みんなが不自由になった。家から出られなくなり、明日どうしようと思いますよね。そんなとき、障がいのある人に「私たちはいつもそう考えて、悩んでるよ。だから今、考えてね」と言われたんです。何も考えず、やりたいことができたけれど、今はそれができない。だからこそ、考えるときなんです。すべての人がイコール、対等になる。人権を考えるチャンスです。そんな共生社会、多様性社会になればと思います。

橋本会長

このプログラムは東京2020オリンピックの閉会後、東京2020パラリンピックの開幕前に実施されます。初めて本格的に1つになった両大会の組織委員会ですから、オリンピックからパラリンピックにしっかりとバトンタッチすることが必要です。真の多様性と調和を実現するためにも、組織委員会としてパラリンピックは勝負ですから。そのための、「MAZEKOZEアイランドツアー」が楽しみです。

東さん

東京2020大会はパラリンピックに向けても様々な世界で初の取り組みをしている。この「MAZEKOZEアイランドツアー」をたくさんの人に見てもらって、パラリンピックも面白そうだという流れを作りたいと思っています。面白いし、お得感や不思議なものがある。そんなふうに人の興味をそそり、探求心をくすぐるような映像を、たくさんの人に見ていただきたいですね。

出演者の一人、平原綾香さんと
出演者の一人、平原綾香さんと
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東ちづるさんのプロフィール

俳優。一般社団法人Get in touch 代表。広島県出身。会社員生活を経て芸能界へ。ドラマから情報番組のコメンテーター、司会、講演、出版など幅広く活躍。プライベートでは骨髄バンクやドイツ平和村、障がい者アート等のボランティアを29年間続けている。

2012年10月、アートや音楽、映像、舞台等を通じて、誰も排除しない、誰もが自分らしく生きられる「まぜこぜの社会」を目指す、一般社団法人Get in touchを設立し、代表として活動中。